ガラパゴスニッポン① 低容量ピル

ドラッグラグ、デバイスラグという言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
これは、薬や医療機器(デバイス=医療機器)が日本に入ってくるタイミングが海外と比較して遅い、ということを意味します。

医薬品や医療機器を販売するには、”承認”が必要です。
日本は厚生労働省の外郭団体であるPMDAが審査機関となり、取り扱う企業が安全で有効なことを証明する書類をPMDAに提出し、審査、承認されるとめでたく日本国内で販売できるようになります。
この書類、もちろん身体への影響が大きいほど膨大な量になります。
臨床試験のデータもですし、臨床試験の前に行う動物を用いた試験、実験室で行う試験、原材料、製造工程・・・!!
その薬や医療機器が安全で有効であることが証明された場合のみ、販売ができる、ということです。

承認のタイミングは国によって異なります。
一般的にヨーロッパが早く、次にアメリカ、そして最後に日本といわれています。
悲しいかな、日本は新しい薬や機器が入ってくる最後の国になりつつあります。
アジアのほかの国に先をこされることもよくあることです。
遅いということは悪いことばかりでもなく、実際に本格的に使われ始めてから起きる合併症などが先行して使っている国でわかる、ということもあります。

でも、タイムラグが10年を超えるものもあり、日本の医療がちょっとガラパゴス化していくこともあります。
女性の健康のための薬や医療機器の中にもそういうものがいくつかありますので、ちょっとご紹介。

そのひとつが低容量ピルです。
アメリカでは1960年に経口避妊薬(高容量ピル)が世界で始めて認可され、その後1973年にアメリカで低容量ピルが発売。
そして日本で低容量ピルが承認されたのは1999年。アメリカに遅れること26年・・・!
このとき国連加盟国で承認されていなかったのは日本だけだったそうです。

現在は複数の種類が承認されており、処方薬なので医師の処方が必要です。
クリニックや病院にいって処方してもらわないといけません。
そして保険が適用されるのは月経困難症の治療のみで、そのほかの目的は、たとえば避妊や旅行のため生理をずらしたい場合、自費となります。

さて、ガラパゴスはまだガラパゴスです。
国連がWorld Contraceptive Useというデータを発表しています。
これは、世界の各国で用いられている避妊(=contraceptive)の方法の割合のデータです。
日本は2015年の調査で低容量ピルの使用が0.9%。
日本に住んでいる感覚からいったらそんなもんかなと。

しかしですね、他の先進国をみてみると、アメリカ13.3%(2013)、オーストラリア23.8%(2012)、スイス24.5%(2012)、ドイツ37.2%(2005)、フランス41.2%(2011)・・・
書いていて悲しくなってきたので、この辺でやめます。
ヨーロッパでは半数近い女性が服用している国もあります。

アジアの特性かなと思いみてみると確かに中国1.2%(2006)、韓国2.0%(2009)、です。
しかし、アジアももう少し広げてみると、インドネシア13.4%(2015)、マレーシア13.2%(2014)、ミャンマー13.8%(2016)、タイ32.1%(2012)でした。

低容量ピルは、女性の自己決定にも関わるものといわれています。
なぜって?
避妊を男性任せにしないからです。
コンドームつけて、といえなくて、という女子の声もききます。
コンドームは破れることもあります。
でも万が一妊娠して人生に大きな影響があるのは女性です。
自分の人生は自分で決める。低用量ピルはそのためのものでもあるのです。

なぜ低容量ピルの普及がこんなに低いのでしょうか。
女性がピルを飲むことをよしとしない社会的風潮があるようにも思います。
性教育も日本は世界の標準からすると遅れているといわれています。ピルについてちゃんと知らない人が多いのも事実です。
情報が与えられて飲まないことを選択しているならいいと思います。
しかし、情報が与えられず、選択肢が与えられていないので選べないのはよろしくありません。

日本は男女平等ランキングでも144か国中114位です。
特に政治と経済で男女のギャップが大きいといわれています。
国の意思決定の場である政治の場に女性がすくないということは、国の仕組みに女性の視点があまり入っていないということではないでしょうか。
日本をもっと女性たちにとって生きやすい社会にしていきたいですね。

(2018年10月 文責:北奈央子)